Vol.202 【時代を変えた技術・製品 Vol.11】

【時代を変えた技術・製品 Vol.11】

日本初のテープレコーダー ソニー G型テープレコーダー「GT-3」

技術・製品と共に時代を振り返るこちらのコーナー。第11回目は1950年(昭和25年)に発売、“もの言う紙”とも呼ばれ録音機の新しいカタチを示した日本初のテープレコーダー「G型 GT-3」をご紹介します。
開発したのはソニーの前身であり、戦後まもなく誕生した東京通信工業(東通工)です。当時の東通工は、復興のために通信機材の確保に急ぐNHKが主な取引相手でしたが、創業者の井深大氏、盛田昭夫氏は、なにか大衆向けの製品もつくりたいと模索していました。はじめは針金に音声を磁気録音するワイヤーレコーダーに目をつけていましたが、ドイツで開発され、アメリカでも広く使われていたテープレコーダーと出会い、すぐさま切り替えたのです。その決め手になったのは、比べ物にならないほどの“音の良さ”でした。

テープレコーダーを作ることを決意したものの、その当時日本でそんなことを考えている人は誰もいませんでしたし、参考書籍すらない状態でした。テープのベースを何にするか!? 磁気材料にはどういうものが適しているのか!? など、何もかもが手探りで、文献を探ったり、さまざまな人や会社を訪ねたり、実験を繰り返したりながら、立ちはだかる難問をひとつずつクリアーして行ったのです。
そうして1949年9月、ついに試作1号機が完成しました。これはアメリカですでに実用化されていた「マグネコーダー」から原型を取った縦型のテープレコーダーです。そして翌年1950年1月に「G型」が完成しました。イニシャルのGは「Government」を意味しています。「G型テープレコーダー」は、当時の「蓄音機」に替わるまったく新しい「録音機」としてメディアで紹介され、実際に見た人は皆、自分の声を聞いてゲラゲラと笑ったり、喜んだり、「面白い!便利だ!」と言い、大いに注目を集めました。
しかし、いざ販売を始めてみるとまったく売れません。「日本で初めての画期的な商品だ。しかも、これほど便利なものを客が買わないはずがない」という期待とは、真逆の結果となってしまったのです。16万円という高価格(当時の大卒初任給は5,000円程度)に加え、35kgという重さがネックだったと振り返っています。誰しもが興味を抱いたにも関わらず、まったく「購入」には至らない。残念ながらG型はヒットしませんでした。

それでも東通工はテープレコーダーの可能性を信じ、改良を重ねた新型を次々と発表します。1951年(昭和26年)には「G型」の普及機としてポータブルテープレコーダー「H型」を投入。イニシャルのHはもちろん「Home(家庭)」を意味し、日本で初めての家庭用テープレコーダーといえる存在です。そして1951年(昭和26年)に発売した「M型」(型番M-1)は、放送局向けの取材用携帯型録音専用機として活躍しました。M型を使った街頭録音のラジオ番組が人気となり、街頭録音に勤しむ主人公の風刺漫画「デンスケ」の影響から、M型も「デンスケ」という愛称で広まったことを記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その後もソニーのテープレコーダーは小型化やカセットテープの導入など、改良を重ねてどんどん進化していきました。

こうした創成期を経て、ソニーの録音・録画機器は発展を続けます。日本ビクターの「VHS」と覇権を争ったビデオカセット規格「ベータマックス」や、携帯型ステレオカセットテーププレイヤーとして登場し、現在もデジタルオーディオプレーヤーとして人気の「ウォークマン®」、アナログレコードやカセットテープに替わる音楽記録メディアとして「CD」や「MD」など、それぞれの時代を代表する製品を生み出してきました。人々の生活と深く結びつく録音機器の礎となった「G型テープレコーダー」は、まさに「時代を変えた技術・製品」と言えるのではないでしょうか。今後もさまざまな業界の製品をシリーズ展開でご紹介し、技術革新の歴史に触れて参ります。

■参考サイト:ソニー公式ウェブサイト:Sony History
これだよ、我々のやるものは<日本初のテープレコーダー>
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-02.html

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