Vol.203 DARPA:災害対策用の小型ロボット開発に注力!

DARPA:災害対策用の小型ロボット開発に注力!

その性能評価はオリンピックスタイル

今年6月末~7月初旬にかけて、西日本を襲った「平成30年7月豪雨」。9月4日(火)に過去最大規模で上陸し、近畿地方を中心に高波や暴風による被害をもたらした「台風21号」。さらに9月6日(木)に発生し、北海道胆振地方中東部を震源に、土砂崩れや家屋の倒壊、液状化現状などを起こした「平成30年北海道胆振東部地震」など、予想をはるかに超える規模の災害が例年のように起こり、各地で甚大な被害をもたらしています。
こうした自然災害は日本国内だけでなく世界各国で増加しており、災害発生時にどのような手段で人命を救い、支援し、破壊された街を復旧させるのかは今後の大きな課題です。先月、当ページで紹介しました「イタリア工科大学(IIT)が開発した災害救助用“半人半獣ロボット”『Centauro』」(※1)のように、人が踏み入っていけないような瓦礫の中や不安定な場所もものともしないロボットは、復旧作業において有用な存在ですが、大きなサイズでは入っていけないような場面も多く存在します。

DARPA(アメリカ国防総省・国防高等研究計画局)は、そうした環境下でも活躍できる“マイクロロボット”を開発するため「SHRIMP(SHort-Range Independent Microrobotic Platforms)」という新たなプログラムを立ち上げました。災害時に使用できる多機能なマイクロロボット・プラットフォームを開発・実証することを目的としたこのプログラムの特徴は、開発するロボットのサイズにあります。それは、排水管や水まき用のホースにまで入り込めるようなロボットで、写真のように指先に収まってしまう、注視しないと見落としてしまうようなサイズです。
近年開発されてきた小型ロボットは、小型化するための技術が不十分で、また複雑な作業を実行できるパワーや操作性が不足していました。DARPAプログラムマネージャーであるRonald Polcawich博士は、「ロボットシステムの小型化には、基盤技術の大幅な進歩が必要になる」と説明しています。つまり「SHRIMP」は、小型ロボットの開発を目指すと同時に、基盤技術の向上を伴うものでもあるのです。

「SHRIMP」ではまず、マイクロロボット・プラットフォームの開発に向けて、「アクチュエータ」の素材や構造、動力源に関する基礎研究を行います。これらは小型ロボットの強度や機敏さ、単独での作業効率を向上させるために必要な研究です。(※「アクチュエータ」とは、入力されたエネルギーや電気信号を物理的な運動に変換する機械要素のことを指します) アクチュエータの優れた素材や構造を開発することで、小型ロボットの機動性や耐荷重能力、器用さなどが大きく改善されます。さらに高効率の動力源と電力変換回路の開発により、単独で複雑な作業が可能となります。
こうしたプロセスで開発した「多機能マイクロロボット・プラットフォーム」を用いて、新たな取り組みにも挑戦します。それは、開発したロボットによる“オリンピックのような競技大会”です。アクチュエータと動力源、マイクロロボット・プラットフォームという3つの技術領域に分けて、規定された重さや大きさ、電圧の範囲でそれぞれのロボット開発が進められます。2019年4月からの1年間、その次の1年間で違う規定が設けられ、技術を応用しながらロボットを開発することになります。そして迎える競技大会の中で研究結果が評価されるのです。
アクチュエータと動力源の技術領域では、ジャンプの高さや距離、持ち上げられる重量を競うなどのパワーに関わる項目、プラットフォームでは平坦地と傾斜地での操縦性、耐荷重能力、スピードなどの項目が評価対象です。高跳びや幅跳び、重量挙げ、短距離・長距離走といった、まさにオリンピックのような種目です。

研究者は種目別にロボットを用意できますが、単一のロボットが複数競技にエントリーできることが望ましいとされています。そこには多機能なプラットフォームの開発を推進したいという「SHRIMP」の姿勢が表れていると言えそうです。個々の競技で優秀な成績を収めた上位3体のロボットには、「金、銀、銅」に相当する証明書が与えられます。“賞金ではなく栄誉を授かる!”これもオリンピックと同様の価値基準です。
こうしたオリンピックスタイルの評価が行われるのは2021年以降になりますが、近い将来、災害現場での活躍や、小型ロボットのオリンピックを見られるような時代が来るかもしれません。今後どのようなロボットが誕生していくのか、「SHRIMP」の動向を見守っていきたいと思います。

■参考サイト:DARPA News And Events 2018年7月17日
Developing Microrobotics for Disaster Recovery and High-Risk Environments
https://www.darpa.mil/news-events/2018-07-17
■Rentec Journal Vol.193 (※1)
イタリア工科大学(IIT)が開発した災害救助用“半人半獣ロボット”『Centauro』とは!?
http://journal.orixrentec.jp/2018/08/iitcentauro.html

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