Vol.212 世界の養殖業をリードする近畿大学の新たな挑戦!

世界の養殖業をリードする近畿大学の新たな挑戦!

AIとIoTで養殖稚魚の選別作業を効率化!

こちらの記事のタイトルをご覧になり、「AIとIoTの波がここまで!」と感じられた方も多いかと思います。近畿大学水産研究所が、8月下旬に発表した新しい取り組みは、クラウドとデジタル技術を活用した「漁業の"働き方改革"」です。豊田通商、日本マイクロソフトと共同で、これまで人手に頼っていた養殖現場での「稚魚の選別作業」に、AIやIoT技術を活用した「稚魚自動選別システム」を開発・導入し、「漁業」という労働集約型の第1次産業における業務効率化を図ります。

近畿大学水産研究所ではこれまで、絶滅危惧種であるクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功するなど(※近大マグロ/2002年に完全養殖達成→2004年に初出荷)、多くの魚種の養殖研究を行ってきました。その中でもマダイ(真鯛)の養殖研究は、同研究所における柱の1つです。近畿大学水産養殖種苗センターでは、マダイの稚魚を生産し、大学発のベンチャー企業(株式会社アーマリン近大)を通じて、全国の養殖業者に販売しています。その数は全国の年間生産量の24%(およそ1,200万尾)に上ると言いますから驚きです。

世界の養殖業をリードする近畿大学の新たな挑戦!

稚魚の出荷は、年明けと秋の年2回行われ、およそ8~10cm程度に成長した養殖マダイの稚魚を全国の養殖事業者に出荷します。この際に、生育不良の稚魚を取り除き、出荷基準を満たす稚魚だけを選り分けるこの「選別作業」が、稚魚の品質の“要”となりますが、ここで重要となるのが、稚魚を吸い上げるポンプの流量調節です。ご紹介写真の様に、稚魚の選別作業は「人手」で行っているため、選別を行うベルトコンベア上を流れる稚魚の数が多すぎると選別が追いつかなくなり、逆に少なすぎると作業の生産性が下がってしまいます。常に最適な数の稚魚をベルトコンベアに送るために、担当者は選別ライン全体の動きと各人の選別能力を考慮しながら、“手作業”でポンプの流量調節を行っているのです。研究所にとって、スキルの高い担当者を長時間の単純作業から解放し、より高度な作業に振り向けることは長年の課題でした。

近畿大学水産研究所はこの課題解決に向けて、長年にわたりクロマグロの完全養殖事業において技術協力関係にある豊田通商と、新たに日本マイクロソフトも参画し、AIやIoTを活用した画像解析と機械学習技術を組み合わせた「稚魚の自動選別システム」を開発、現在実証実験を行っています。

世界の養殖業をリードする近畿大学の新たな挑戦!

豊田通商が、自動化システムのハードウェア設計とプロトタイプ構築を行い、日本マイクロソフトは、目視作業の要件をもとに同社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(※)」のIoT機能と、AI機能である「Cognitive Service」と「Machine Learning」を活用し、ポンプの流量調節をリアルタイムで自動化するシステムを設計、開発を行いました。この自動選別システムにより、ベルト コンベア上にある魚影面積と空き間の面積を画像解析し、さらにそれぞれの稚魚数で選別者がどのように作業しているのかを機械学習させることで、作業のための最適値を割り出し、ポンプの流量調節作業を自動化するソフトウエアを開発(試作)しました。これにより、現在3人必要な常駐の作業員を2人で対応することが出来るといいます。実証実験を継続して、2019年3月までに本番環境への実装を目指しています。

さらに今後の展望として、現在目視と手作業で行っている「生育不良の“稚魚を取り除く作業”」においても、画像解析と機械学習を組み合わせて自動化することを計画しています。豊田通商と日本マイクロソフトは、この取り組みに関して、継続的な技術支援とシステム開発を行っていくとともに、これらの事例をもとに、労働集約型の第1次産業において、AIとIoTを活用した“働き方改革”への貢献を目指していくとしています。

第1次産業における“働き方改革”。今後も適時注目して参りたいと思います。※「真鯛」の写真はイメージです。

■参考サイト/五十音順
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□近畿大学水産研究所
http://kindaifish.com/
□豊田通商株式会社:プレスルーム
近畿大学水産研究所、養殖稚魚の選別をAIとIoTで効率化
~クラウドとデジタル技術を活用して漁業の"働き方改革"を目指す~
https://www.toyota-tsusho.com/press/detail/180821_004236.html
□Microsoft Japan News Center
「海を耕せ」:世界の養殖業をリードする近畿大学が次にチャレンジするのは、AI と IoT が支える第一次産業の働き方改革
https://news.microsoft.com/ja-jp/features/workstyle-innovation-aquaculture-kindai/
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※「Microsoft Azure」は、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。その他、記事内で記載している社名・商品名は各社の商標または登録商標となります。

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